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自動車業界(と地球)の将来 [仕事]

今日はちょっと固い話を。

世界的な金融危機の影響もあり、私のいる自動車業界は新車需要が冷え込み、深刻な状況になっている。
自動車業界のエンジニアとしては憂慮すべき状況なのだが、まったく関係のない第三者的立場で見ると、悲観すべきことばかりでもないと感じる。

地球温暖化や大気汚染等の世界規模の環境破壊が進行しているが、中国やインド等の新興国でモータリゼーションが急速に進んでいることが原因のひとつであることは間違いない。
その勢いは、主要先進国がいくら努力しても、地球全体で見て環境を改善方向へ持っていくのは極めて困難なほどだ。
もちろん、新興国にも経済発展する権利はあるし、モータリゼーションも悪いこととは言えない。
しかしながら、新興国に対する世界中の自動車メーカの戦略はこれでいいのだろうかと考えてしまう。
例えば、中国とインド。
どちらも10億を超える人口を抱えており、この2国で世界の人口の3分の1くらいになる。
北米、欧州、日本という三大市場がこれ以上パイを増やせないような状況の中で、自動車メーカが成長のために新興国に目を向けたのは自然な流れだ。
ただ、自動車という商品は、生活を豊かにしてくれるだけのものではなく、環境破壊につながるものも持っている。
世界中の自動車メーカは、その負の側面を完全に無視して、利益追求に走っていることは否定できない。
こういう爆発的に需要が増えていく市場に対しては、最初から環境負荷を考慮した商品を投入しなければならなかったのではないか?
実際のところは、まだ排ガスや燃費の法規制が緩いことから、その規制をクリアできるギリギリまでコストを削減した安い商品を売りまくっている。
地球環境に配慮しているとかエコだとか大々的に宣伝しているメーカも例外ではない。
もちろん自動車メーカばかりが悪いわけではなく、その意向に従っているサプライヤにも責任はある。そこで働く私も、一個人の思いでどうこうできる問題ではないとはいえ同罪だ。(自分の手の及ぶ範囲でできる限りのことはやるのですが。)
区別が少々乱暴になってしまうが、新興国で販売されているクルマは、北米、欧州、日本では基本的に販売することが許されていないものだと思ってもらっていい。
その結果、この2国の大都市圏は深刻な大気汚染に悩まされている。

そんな実情の中、今の新車需要の落ち込みは、神様が末期的状態の地球に施した延命治療のようにも思える。
正直なところ、自動車メーカがこのままの姿勢でいる限り、事態の改善はあり得ない。
自動車業界と地球の将来はどうなるのだろうか。
そろそろ、国や企業の利益ばかりを追求することは考え直さなければならないのでは... 


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めぎ

頭の痛い、そして身に覚えもあって非常に難しい問題ですね。なにしろうちではずっと自転車と公共交通機関だけの生活だったのですけど、とうとう必要に迫られて車を買ってしまいました。20年くらいの中古ですから、規制云々どころじゃないですし。ドイツ中そんな車がごろごろしてますし、速度部制限のアウトバーン、もあるわけで、いいのかこれで?と思います。でも、車でちょっと出かけられる楽しみはもうやめようがなく、エコの車を買いたいと思っても新車は高すぎるし、仕事はさておき休暇に行くのに飛行機にも乗っちゃうわけで、どうしたらいいんでしょ。
by めぎ (2008-11-08 18:58) 

きょうパパ

自動車で子供達やらの送り迎えしながら、ゴミの分別したり、エコバック持ち歩いたり・・・。いっぱい矛盾があって、それでも色々何か考えてやっていくうちに、少しはよくなってくる、そう思うようにしています。でも、難しい問題です。
by きょうパパ (2008-11-08 20:08) 

トリバン

難しい問題ですね。
インドのデリーあたりはバスとオートリキシャは全て天然ガスだったりもしますが、一般的に発展途上国の人々って環境、そして省エネに対して無頓着な場合が多いですね。
やはりこれは住んでいる人が選択する問題なんでしょうね。
押しつけても、どうせろくな事にはならない。
ただ、中国あたりの大気汚染は他人事とはいえませんが。

by トリバン (2008-11-08 20:09) 

ナツパパ

かつての日本も自動車の排気ガスは大変な問題でしたよね。
それを必死にクリアしたのだから、よその国にもその技術で貢献すれば、
と思うのですが、やはり値段が問題ですか。
たしかに、今年正月に行った北京でも大気汚染がすごいらしく、
景色が霞んで見えました。
それでも、ますます車は増えるのでしょう。
思えば大変な問題ですね。

by ナツパパ (2008-11-09 08:42) 

koyuki

色々考えさせられますね。
日本でもやっとエコという言葉が浸透してきたのがつい最近ですから、中国やインドでその考えになることっていうのは、時間がかかるでしょうね。
各種問題は山積みで、私個人としてはそれをどうすることもできません。
せめて自分でできることを実践しようと思います。

by koyuki (2008-11-09 13:43) 

おろ・おろし

日本では、
自動車の販売台数が前年比を下回っているということですが、
登録車数はどうなっているのでしょうか?

我が家にも、3台車がありましたが、
親の一台は、県外にいる子供に譲ってもらいました。

環境より、サイフのことを考えて、今年、買い換えた車は、
2200ccから1300ccにダウングレードして、燃費も半分です。

アイデアとしては、世界中で、車の台数を総量規制することかと
思いますが、自由化の中で難しいでしょうね。

そういった意味から言えば、ガソリン代の高騰も、資源の有効利用を
目指すうえでは必要なのかもとは思いますが、、、
個人的には、やはり安いほうが良い・・・。

我ながら、身勝手ですね。
by おろ・おろし (2008-11-09 13:51) 

basashi

このような問題を考えると、最近の原油価格の低下は良かったのか、
それとも悪かったのか判断に迷います。
中国、インド等新興国の中にも地球環境を保全し、持続可能な社会を
実現するために努力している人がいてくれることを願うばかりです。
by basashi (2008-11-09 14:32) 

炎遊人

新車需要の落ち込みが取り沙汰されていますが、今小生の滞在しているUAEでは、ローカルの乗っていた車が中古市場に数多く出回り、低所得者である外国人労働者でも少し頑張れば手に入れられるほどになってきたことで、新旧の車が溢れかえっています。 その結果渋滞が深刻化し目的地へ行く時間が読めなくなりました。
また、日本では見向きされない(残存価値がゼロに近い)欧州車、おもにメルセデスやBMWの10年落ちまたはそれ以上の車が、なんと日本から入ってきています。
ここでは燃料が安いということもあり、間違いなく最悪のサイクルの真っただ中にあると思われます。
by 炎遊人 (2008-11-09 15:28) 

YAP

めぎさん、きょうパパさん、トリバンさん、ナツパパさん、koyukiさん、おろ・おろしさん、basashiさん、炎遊人さん、コメント & nice! ありがとうございます。

めぎさん、
新しいクルマはたしかに環境に優しいので、日本でもそれを前面に出して買い替えを促すCMを流している会社があります。
しかしながら、環境に優しい新車も製造時の環境負荷は相当なもののはずで、それを考えると、まだ使えるものを使い続けるという発想も「アリ」だと思います。

きょうパパさん、
えらそうなことを書きながら、私の生活も矛盾だらけです。
そもそも仕事からして矛盾を含んでいますからね。
ただ、その中でも、「今の自分がささやかながらもできること」を考えるだけで、それを多くの人が考えるだけで、それだけでかなり変わってくるのではないかと思います。

トリバンさん、
新興国、発展途上国は、環境云々の前に、自分の生活や命を守るためにより切羽詰った優先度のことが多いでしょうから、仕方ない面があるでしょう。
そういう国に対してどう援助できるのか、これも先進国が考えなければならない問題だと思います。

ナツパパさん、
本文中にも書きましたが、中国やインドのような巨大市場に出て行くには、最初から環境負荷を考えた商品を投入すべきだったと思うのですが、利益を考えなければならない企業はそうは考えず...
この姿勢はすぐには変わりそうにないので、難しいところです。

koyukiさん、
個人でできることは限られているのですが、自分のできる範囲で無理なくやるだけで変わることもあると思います。

おろ・おろしさん、
登録車数も落ち込んでいるようです。
逆に軽自動車は伸びているみたいですね。
私もガソリン代は安いほうがうれしいわけで、やはり身勝手です。

basashiさん、
夏までの原油価格高騰は明らかにバブルでしたから、適正な価格に戻ったということは喜ぶべきことだと思います。
このせいで、不当に苦しんでいた人は多かったわけですから。
ガソリン価格も、公共交通機関で日常の足が確保されている地域は高めにしたり、介護等でやむを得ない人に対しては安めにしたりとか、実現は難しいでしょうが、やり方はあるような気がします。

炎遊人さん、
産油国で生活している人は、また特別な感覚を持っているのでしょう。
油脂系の価値が極端に違うでしょうから。
モータリゼーションは、もはや一国の中だけで考えていてはいけない時代なのかもしれませんね。

あんぱんち~さん、toraneko-toraさん、nice! ありがとうございます。
by YAP (2008-11-10 18:10) 

Jalana

人間が生産活動している限りは環境に悪影響を与えてしまって
いるんですよね。
ハイブリッドカーが環境にいいとはいうものの、悪さの程度問題。
それでも少しでも環境に優しいチョイスをしていくべきなんでしょう。
日本のODAも海外の箱物に投資するだけでなく、環境問題も視野に
入れた技術支援なんかに力を入れるべきなのかもしれませんね。
難しい問題です。
by Jalana (2008-11-18 00:40) 

YAP

Jalanaさん、コメント & nice! ありがとうございます。
人間が生活しているかぎり何か悪い影響を環境に与えているわけなのですが、そろそろ私たちの生活を考え直す時期なのかもしれませんね。
by YAP (2008-11-18 08:01) 

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