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民意で国は動くか? [雑]

帰省の話を書き始める前に、重い話を。
明日は金曜日だし...

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毎週金曜夜、総理官邸と国会議事堂周辺で、原発再稼動への抗議行動が行なわれている。
私も原発反対の立場を取っているので、口で言うばかりではなく、行動でも何かしなければと行ってみた。





 

参加人数は、主催者発表と警視庁発表がいつも大きく差がついているが、私のなんとなくの感覚だと、主催者発表の数に近いのではないかと。
口コミや SNS で拡大をしてきたこの活動だが、そこには強い民意を感じるものの、欧米で起こっているような過激なデモと比較すると、なんとも大人しく紳士的であることか。
いや、もちろん暴動を煽ろうというのではない。
むしろ、平和を愛し争いを好まない日本人的であり、その美徳を貫いて今のまま継続してほしいと思う。
だだ、これで国が動くのかどうか... 





私はこれまで原発反対の立場を取っているが、いちおう自分なりにまとまった理由が5点ある。
それをここに書いておく。

1.日本に建てられている原発の安全性が低く、万が一のリスクが大きすぎる
福島の事故は、元々は想定外の津波によって深刻な事態に陥ったかのように言われていたが、実は既に震災発生時の揺れで全電源喪失となっていたというのが真実のようだ。
これまでに日本の原発で震度6以上の揺れに無傷で耐えることができたものはなく、程度の差こそあれ被害を受けている。
それが外部に影響を及ぼす事故になるかどうかは状況次第であり、福島以前の地震時は運が良かったと言える。
もしも外に放射性物質が漏れ出すほどの事故になれば、半径数10km圏内には人が住めなくなるほどのリスクを持っている。
地震の多い日本の原発は活断層の上に位置すると思われるものもありながらろくに地質調査もされておらず、耐震性も公表されているほどにはないことが明らかになってきているため、この先も福島級の事故の可能性は低くないと思われる。
安全性については、特に耐災害に対してのみ語られているが、過去に起きた深刻な事故(スリーマイル島、チェルノブイリ、東海村(これは原発ではないが))はいずれも人為的ミスで起こったということも忘れてはならない。

2.原子力ムラの人たちを信用できない
例を挙げればきりがないので書かないが、原子力に関わる人たちが未だに利害で動いているのが見え見えであり、そういう人たちが決めたり検査してきた安全基準やストレステストがまったくもって信用できない。やらせの意見交換会とか試験データの捏造とか。
あれだけの事故を起こして被害を拡大しておきながら、だれも責任を取らないし、新しい人事も怪しさプンプンである。
そういう人たちの発する安全宣言や再稼働を推進する動きをどうすれば信用できるのか。
犯罪者が自分たちの都合のいいように世の中のルールを作って、それに一般市民を従わせようとしているようなものでしょ?
私はそんなものに従って動きたくないし、信じることもできない。

3.放射性廃棄物の処理問題が放置されたまま
人体や環境に大きな影響を及ぼす放射性廃棄物の処理問題が解決の目処もないまま放置され先送りされている。
誰かが「トイレのない家を建てるようなもの」という表現をしていたが、その例え以上に深刻だ。
「100,000年後の安全」という映画を観ると、放射性廃棄物の問題がこの先どれほど長く続いていくのか、その問題の大きさを理解することができる。
ガラスで固めて地下数百mに埋めてなんて言ったりしているが、それでいいのか?
けっきょくは問題を遥か先の世代まで先送りにしているにすぎないと思うのだが。
我が家には子供がいないので、自分たちが生きていくこの先数十年までのことを考えればこんな問題はどうでもいいと思えるかもしれない。けど、そうは思えない。
子供や孫がいる人たちは、どう考えているのか知りたいところだ。

4.実は高コスト
原発推進派の意見で未だに多く聞くのが、火力や自然エネルギは高コストであり、発電コストを下げるためには原発は不可欠だということ。
私はこの意見は完全に数字上のまやかしだと思っている。
補償や廃炉に必要なコストをまったく考えておらず、ランニングコストだけで話をしているので。
たった一度の深刻な事故で、周辺の住民や産業への補償は莫大なものになっている。
これを東京電力が負担できないので、その大部分は国、つまり私たちの税金から捻出するしかない。
本来であれば、これは電力会社が負担すべきで電気代に乗せられるはずのものであり、同時に、既に存在する原発の安全対策のためにも莫大な費用が発生し、それもまた電気代に乗せられるべきものだ。
未だに原発は低コストなんて言っているのは、「事故のときに電力会社は補償しない」、「金をかけた安全対策は実施しない」と宣言しているに等しい。
ただし、原発捨てて廃炉にするにしても、そこでも莫大なコストが発生する。
それを理由に、「だったら動かしたほうがマシ」だと言う人もいる。造ったもん勝ちな状態だ。
ほんとに、よくもまあこんなものを造ったものだ。

5.大きなリスクを地方に押し付けてはならない
福島の事故を見て、日本の原子力行政が正しかったことがひとつだけ証明されたと思っている。
それは、深刻な事故が発生しても都市部(今回の場合は首都圏)に被害を及ぼさない立地に建設したということ。
これだけのリスクがあるものを、金をちらつかせて「安全ですから安心してください」と欺いて耐震基準を満たさないものを造り、地方にリスクを押しつけたのがこの結果である。
都市部で消費するエネルギを、なぜこんな離れた土地で創らなければならないのか。
2030年の原発依存度をどの程度にするかが議論されているが、例えば15%を原子力でまかなうとした場合の仮定では、40年経過して廃炉としなければならない既存原発のことも考えると、新たに2基の原発建設が必要だそうだ。
その2基を、東京と大阪のど真ん中に造るというなら、私は諸手を挙げて賛成派に寝返ってもいい。もちろん、廃棄物貯蔵施設もそこにね。
電気を必要とする土地で創る、ゴミを出した人が責任を持って処理する。当たり前の話だ。
もし原発を大都市に造ることができない理由があるなら、その理由は地方に建てる場合には当てはまらないのか?
どんな理由を並べたって、完全に都市部の人間のエゴだと思う。

以上、私の中で考える理由をもっともらしく書き連ねたが、最近、こんな理由を考えるのもどうでもいいと思うようにもなってきた。
もっと感情的でもいいのではないかと。
もし、自分の住んでいる街が、自分の故郷が、福島のような事故の影響を受けて住めなくなったとしても、推進派の人は同じように賛成を言えるだろうか?
この先自分の子供や孫が放射性廃棄物処理に頭を悩ませることを想像しても、賛成と言えるだろうか?
そんな想像をしてシンプルに考えればいいのではないか。
福島で実際に住むところを追われた人たちの中で、「日本の経済のためですからしかたないですよ」って言っている人はいるのだろうか?
ちなみに、私の故郷は原発が近くにあり、福島級の事故が起きれば二度と故郷の景色を見ることはできなくなる。

私は製造業で働くサラリーマンなので、経済が大切、経済のためにエネルギが必要という意見も理解はできる。
自然エネルギに今すぐ転換を!なんてことを声高に叫ぶほど技術に無知なわけでもない。エンジニアですから。
(ただ、今は技術的に未成熟で実のところはあまり役に立っていなくても、積極的に推進していくことで使えるものに進化していく可能性は大いにあると思っている)
だが、コストと効果、そしてリスクを考えると、今の国の動きは正しい方向だとは思えない。
もう一度同じような事故が起こったら、ほんとに日本は終わりだと思うので。
電力会社や国が言っているエネルギ試算自体も、今年の夏の状況を見ると半信半疑である。
今の経済の閉塞状況も、原発動いてたとしたら明るい状況になっていたはず、ってそんな単純なことではないよね。
たしかに、火力に頼らざるを得ない今の状況が続けば、日本の金が外に出ていくばかりである。
エネルギの確保も重要だが、消費するエネルギを減らすこと(単なる節約、節電だけではなく、効率の向上)も、もっと真剣に考えないと。
で、こんな発言をするとすぐに「おまえは電気を使って生活してないのか?」と極論を言い出す人もいるのだが、別に江戸時代に戻りましょうなんてことを言っているわけではなく、10年とか15年くらい前のエネルギ消費水準になればいいだけのこと。
もちろん、今の何でもモノにあふれた生活水準からいくらか落ちてしまうことを受け入れる覚悟は必要である。
少なくとも我が家は、あれこれやって、日本の平均家庭よりもエネルギ消費は少ない生活を送っているつもりでいるが、それでもまだまだやることはあるだろう。

今のこの状況は、拡大、成長こそが最重要というような今の経済の仕組みを考え直すいい機会ではないだろうかと思う。
こんなことを書いていると誤解されそうだが、私は決して「赤」ではない。(むしろそれこそ腐敗と衰退を生み出すものと思っている)
けど、これから人口が大きく減少に転じる日本では、ひとりひとりが今までと同じレベルの消費活動を続けても市場は落ち込んでいく。
そんな中で、成長・拡大を続けていくなんてどう考えても無理でしょ。
すべての企業が海外に活路を見いだせるわけではないし、グローバルで考えても将来的にはけっきょくは同じことで、限られた資源のひとつの星の中ですべてが永久に拡大・成長なんてできるはずなく、どこかで大きく転換しなければならないときは必ずやってくる。(さすがに世界規模になると、何世代か先の話だろうけど)
私は経済学なんて一度も学んだことはないので、今のシステムに代わるものがどうであればいいのかなんて、想像もできないのだが。

職場の同僚や知人とこういう議論になることもあるが、原発推進派(というかエネルギ必要論)の人に「自分の故郷が福島だったら?」という質問をすると、ほとんどの人は答えに窮する。
中には、「いや、『自分はそんなところに住まないから関係ない』と正直に大胆に答える人もいる。
推進派の人が大きく掲げる「日本の経済のため」は、実は「日本のため」ではなく「自分の生活水準のため」ではないかと勘繰ってしまう。
けど、そう言われてしまうと、もうこちらは何も言えない。
それもまた自分の心に正直な意見だと思うので。

いろいろ書いたが、どれだけ自分の思いを書いても、けっきょくは原発推進派の人たちとの溝は埋まらないだろう。
お互いが自分たちを正しいと思っている以上、議論は水掛け論にしかならず、永久に交わることはないのはわかっている。
もちろん、今の不安定な状況の中で "0" か "1" かのデジタルな答えである必要はない。
"0.8" くらいのところから "0" に近づけていくのが最も現実的な路線だろうとは思う。
だけど、今の政府や電力会社の行動を見て考えると、最初から "0" を目指した話をしないと、なし崩し的に "1" に近づいていきそうなので、"0" を求めざるを得ない。

いろいろ思うことを書き連ねていたら、最後にまとめるためのうまい言葉がみつからない。
最後にもう一度。
何かが起こってからではもう遅い。そして、その「何か」は既に福島で起こってしまった。
そういうことです。

上述した5つの反対理由については、パブリックコメントでも提出した。

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junko

そうですよね。もっとシンプルなことですよね。
うんうん、と、うなづきながら読ませて頂きました。
こんなに上手に自分の意見をまとめることは出来ませんけど。
会社だから、原発がなければ成り立たないということなんでしょうね。
関西は原発が占める割合が他のエリアよりかなり多いのに、
電気代は、原発の占める割合がかなり少ないエリアと結局変わらないのは
なぜか・・・みたいに、何かの番組で取り上げていました。
原発が安いなら、関西の電気代は安くなるハズじゃないか・・・みたいな。
ともかく、騙されている感はぬぐえません。
by junko (2012-08-16 21:40) 

noga


それでも日本人は、原発の再稼働を選んだ。
一億総ざんげへの道。動き出したら止まらない。
この道は、いつか来た道。ああ、そうだよ、民族の歴史は繰り返す。

意思のあるところに方法はある。(Where there’s a will, there’s a way).
意思のないところに解決法はない。
意思は未来時制の内容であり、日本語には時制がない。
それで、日本人には意思がなく、解決法が見つけられない。
自然鎮火を待つのみか。

耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、もって万世のために太平を開かんと欲す。
不自由を常と思えば不足なし。
座して死を待つか、それとも腹切りするか。
私の父は、玉砕した。何のお役に立てたのかしら。
安らかに眠ってください。過ちは繰り返しますから、、、、

ああしてこうすりゃこうなると、わかっていながらこうなった、、、、、
12歳のメンタリィティには、知恵の深さが見られない。教養がない。
わかっちゃいるけど やめられない。ア、ホレ、スイスイ、、、、

白く塗られた黒いオオカミの足を見破ることは難しい。
だます人は悪い人。だまされる人は善良な人。おとり捜査は難しい。
この調子では、人の命はいくつあっても足りるものではない。
自らは望むことなく危機に陥る民族か。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://3379tera.blog.ocn.ne.jp/blog/

by noga (2012-08-16 22:26) 

HIROMI

青森県は貧乏県なので、原子力に頼ったやり方を変えようとしません。
農業主体の県なので何か合った場合には風評で即座にアウトなのに。
私は、「原子力以外の発電」支持派です。
by HIROMI (2012-08-16 22:48) 

kuwachan

おはようございます。
福島原発の事故が起こる前までは、アメリカのスリーマイル島やロシアの
チェルノブイリの事故があっても、日本では大丈夫と思っていたところがあります。
でも、福島で事故は起こってしまったわけで、別の原発で同じような事故が
起こらないとは限りません。(想定外では済まされません)
原発は事故が起こった時のリスクが大きすぎるので、やはりドイツのように
原子力は廃止の方向で考えてもらいたいです。
by kuwachan (2012-08-17 07:25) 

YAP

junkoさん、nogaさん、HIROMIさん、kuwachanさん、コメント & nice! ありがとうございます。

junkoさん、
いまだに利権に群がる人たちの動きが不穏で、それに引っ張られて動いているように見えます。
既得権を手放せないのでしょう。

nogaさん、
日本人の意思のなさは私も自覚するところです。
それでも今は意思を持って動こうとしている。
この活動が正しい方向へと修正するものになればいいのですが。

HIROMIさん、
青森県は六ヶ所村の再処理工場がありますね。
迷惑施設の誘致というのは、麻薬と同じで一度手を出してしまうとその誘惑に勝てずにズルズルといってしまうものだと思っています。
きっと、現地では誘致派と反対派とで村が二分されてしまったことでしょう。
こんなものがなければ、ずっと仲良く地域で協力し合って生活してきたはずなのに、人々の心まで分断してしまう施設でもあると思います。

kuwachanさん、
福島の事故があっただけに、もうすべては想定の範囲内にしなければなりません。
大飯原発の再稼動の際、安全性は十分確認されたと政府は発表していますが、実際に必要な対策はこれからです。
今、あの地域に大地震と津波がきたら、間違いなく同様の規模の被害となるでしょう。

らんぽうさん、nice! ありがとうございます。
by YAP (2012-08-17 10:49) 

MILK

日本は今、原発推進派と反対派
そして、解ってはいるけれど
なるべくこの問題に深く触れないようにしている
「中間派」とでも言うべき層に
分かれていると思います。

この記事はその中間派に
考える事を提起する内容に
なっていると思いました。

目指すべき方向はやはり
原発に頼らない世界なのでは…と。
by MILK (2012-08-18 00:10) 

YAP

MILKさん、コメント & nice! ありがとうございます。
この問題に触れることを避けている人も多いですね。
それだけ複雑な問題なのだと思います。

shin.sionさん、タッチおじさんさん、zyabuzyabusanさん、da-kuraさん、nice! ありがとうございます。
by YAP (2012-08-18 06:31) 

めぎ

このデモに、今一時帰国中の知り合いが参加していたはずです。
ドイツで原発をやめた一番の理由は3番と5番ですね。完璧な処理ができない上、その処理場をドイツの地方や周辺諸国に押しつけてはならない、という意識が民間レベルで大きかったです。そういう下地があった上で、あのハイテク日本であんな事故が起こったのだから、というのが決定打でした。原発を継続する方向に強力に推し進めていた現政権が民意で方向転換に追い込まれたのは、見ていて素晴らしかったです。
by めぎ (2012-08-18 18:22) 

YAP

めぎさん、コメント & nice! ありがとうございます。
こういう判断ができるというところが、ドイツの国民性の優れているところだと思います。
あと、政治が正しく機能しているという点も、日本のように官僚の顔色をうかがいながら政局で動いている政治家たちとも大きく異なります。
日本なんて、完全に地方は切り捨てですからね。
地方都市が疲弊して過疎化が進む一因も、そういうところにあると思います。

knackeさん、nice! ありがとうございます。
by YAP (2012-08-19 06:20) 

YAP

とみっちさん、nice! ありがとうございます。
by YAP (2012-08-19 16:28) 

ちんくろ2級

民意で国を動かさないと、大変なことになるのを、身を以て我々は60年前に知ったはずなのに、のど元過ぎれば熱さを忘るでしょうか。
まだ遅くはありません、民意で国を動かしましょう。
by ちんくろ2級 (2012-08-21 01:34) 

YAP

ちんくろ2級さん、コメント & nice! ありがとうございます。
マスコミの方からこういうコメントをいただけると、非常にうれしいです。
いまだに利権に群がる人たちの動きが見苦しいですよね。
それに従う政治家たちも。
by YAP (2012-08-21 07:48) 

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